「奪取(上)」,真保裕一,講談社

奪取(上) (講談社文庫)
友人がこさえた借金を返すために偽札を作り始める主人公.人間の目や手触りを欺くほどに完成度の高いものを作るのは難しいが,ATMのような機械ならだませるだろうと機械をだませる偽札作りを考える.その結果,世の中をあざ笑うかのように成功する.しかし,借金をとりにきたヤクザは,その偽札も欲しい.そして,偽札つくりの最中にヤクザのベンツを壊したために,返済すべき借金が増える.もうこのままではヤクザの思うがままにされて,一生こき使われることになる.

偽札を本物のお札に両替しているところへ,変なおじいさん(以下,じじい)が二度も現れる.不審を覚える主人公.しかし,本人は,絶対ばれるはずがないと思っていると,スラれた財布から住所を突き止められ,帰ってきたところに部屋にじじいが待っている.そのじじいが,ヤクザにこき使われそうになったところを助けてくれる.やや強引な話も乗って行き方だと思ったが,そんなに違和感はなかった.

このあと,このじじいと今度は人間の目で見てもわからないほどに完成度の高い偽札作りを始める.紙から作り,印刷用の版も彫る.それくらいするなら,造幣局で働こうよ・・・それが彼らの目的でないから仕方ないのかもしれない.

この偽札作りは,完成の日を見ることなく,じじいがヤクザの銃弾に斃れる.主人公はこの後一人で偽札作りを静かに続ける.さて,次はどうなるのか?分厚い本だが思ったよりもスルスルと読めて,次は下巻だ.