「渋沢家三代」、佐野真一、文藝春秋

渋沢家三代 (文春新書)
第一国立銀行を創設した渋沢栄一。そのような印象しかなかったが、深く渋沢家の歴史、栄一の子や孫、篤二、敬三、そして義理の息子(穂積、阪谷)。

渋沢栄一の、資本主義至上として実業家ではなく、資本の文明化を目指す姿を知り、とても感銘を受けた。本当の意味での国家の発展を見通して対応しようとした姿はすばらしい。そのため「財なき財閥」といわれた。実際、敬三の代では、公職追放財閥解体で、すべての財を捨て、四畳半の元執事の部屋に住んでいた時期があるらしい。渋沢栄一を題材とした、城山三郎「雄気堂々」を今度読んでみよう。

あと面白かったのは、陸奥宗光の話。2010年の大河ドラマ龍馬伝」にでていて、海援隊で活躍したと描かれていた。この本では、なんと三井家のスパイであったと書かれていた。これは意外で、初めて知った。三井家は幕府との取り引きで成長していた。幕末の動乱の時期に、佐幕か新政府どちらについたほうが生き残れるかを判断するために情報収集としてスパイを送り込んでいたようだ。その新政府側が、陸奥宗光だったらしい。元々陸奥は三井家の書生であった時期があり、その縁でスパイをしていたらしい。すごいのは、新しい情報は半時間もしないうちに届いたということだ。電話も無線もない時代に、すごい情報網。。。

栄一の言葉が書かれていたので残しておこう。
1) 「土地を持つより利益は細かいかもしれぬけれども、真正なる利益厚生即ち直接の利益ある殖産工業の経営そして自ら土地の価値を高むるようにして、而して今の鼠を待つ猫に偶然なる利益を得さするとも私は少しも口惜しくもない。こういうのが私の主義である。」

2) 「義利両全」、道徳と経済の合一。