「口のきき方」,梶原しげる,新潮社

口のきき方 (新潮新書)
テレビ・ラジオであふれているおかしな日本語,耳障りな若者言葉.言葉の乱れが言われて久しい.それらの乱れた言葉から思わぬ効用と正しい使用法が書かれている.
例えば,「〜的」,「〜とか」,「〜みたいな」,「いちおう」,「〜っぽい」,「会計のほう,○○になります」などという使い方である.曖昧な言い方である.別に曖昧にしなくてもいいところで.
これについて著者は調査を行った.その結論は以下の通りである.

こうした若者言葉をたくさん使う若者は,余り使わない人に比べて,自己主張能力,すなわち,自分の言いたいことをきちんと相手に伝える力をより強く持っている,という傾向がみられた.

あいまい言葉を多用するわかものは,直截的な表現を微妙に避けながら,相手の立場を尊重し,友好関係を損なわないように十分配慮しつつ自分の思いや言いたいことを,若者特有の表現を盛んに繰り出して巧みに伝えるという技術に長けている.

その一方で,

そのもとにある心理は,必要以上に密着することを避けよう,深入りは勘弁してほしいという,ある程度の距離を置いた付き合い方を求める傾向がみてとれる.

とのべている.自分の思いは伝えたいがあまり強く主張して,向こうから深入りはされたくないということである.配慮していると著者は書いているが,自分勝手な気もする.自分の言いたいことは言うが,反論や意見はいわんといてって感じだな.あまり多用されると聞いていてわずらわしいのは事実である(いちおう俺も使っているので,あまり強く主張できないみたいな〜f^^;).


本書では,野球選手「イチロー」をとりあげていた.言葉に対する感性がするどいということで.例はMVPをとったときのヒーローインタビューの場面であった.

インタビューアー:いやぁ,さすがイチロー健在なりですね.
イチロー:勘弁してくださいよ.僕はいつだってずっと健在のままなんですから.

健在の使い方を間違えて,イチローを怒らせてしまった例である.


このように言葉の使い方を少しでも間違えると相手に悪い印象を与える場合がある.私自身もそんな経験がある.なんとか気をつけたいと思うが,なかなかうまくいっていない.本書は,そのヒントを与えてくれた.この本からえたヒントは少ないが,それでも十分に役立つヒントであった.ここから,少しずつ直していこう.