「お江戸の意外な生活事情」,中江克己,PHP研究所

お江戸の意外な生活事情―衣食住から商売・教育・遊びまで (PHP文庫)

中江氏は,「お江戸の〜」シリーズを始め,江戸時代の風俗に明るい.適当な挿絵があり,楽しく読める.同じ分量でも,こういった歴史関連のものは一瞬で読めてしまう.

私にとって,初めて知ったような知識はほとんどなかったが,それぞれの知識を深めることができた.一つへぇと思ったものを紹介しよう.それは,傘の話である.いまや100円で傘が買える時代だが,江戸時代の傘はとても高い.江戸時代の傘といえば,蛇の目傘と番傘.1両を10万円(時代や基準によって異なるが,だいたい10万円で比較されることが多い)と換算すると,蛇の目傘が12500円,番傘が6000円前後.これだけ高価なため,庶民はおいそれと買うことはできない.そのため,傘の骨に張った紙がやぶれたときは,張りなおしてもらうことになる.こうして,リサイクルがなされていた.

また,よく時代劇だと御家人や貧乏旗本が番傘の紙張りを内職にしているシーンがある.傘が高いからこそ,なかなかいい内職になっていたようである.一本の傘に紙を張ると,だいたい2500円くらいのお金がもらえたそうである.

ちなみに当時の一番下級武士の給金は,年に三両二分.今の価値で,33万円程度.当時の一番稼ぎの低い「棒手振り」といわれる行商人や職人でも1日3万円(仕入れにだいたい1.5万円,もちろん雨のときは商売にならず収入0円だが・・・)を稼いでいたというから,武士がどれだけ貧乏であったかが良くわかる.