「現代政治学入門」、バーナード・クリック、講談社学術文庫

現代政治学入門 (講談社学術文庫)
私にとってこの本はとてもわかりやすい。政治の基本がよくわかる。政治としての理論を押し付けることなく、色々な考えがあることを許容する流れに、あっという間に読み進めることができた。今の日本の政治状況を予言するような記載がある。たとえば、政党は議会政治に必要だが、相対的に重要性を失う。そして圧力団体が力を持つと書かれている。圧力団体を旧郵政省の組合や労働連合などに置き換えてみればまさに自民党民主党どちらも同じ状況にあるではないか。

あるいは、政治と産業・科学技術の関係についても述べられている。この本では、次のようにある。
「近代社会において必要とされる経済・社会政策は、命令によって強制できるものではなく、あくまでも説得によるものであり、経営者と熟練労働者の双方を納得させ、その意見に即応するものでなければならない。
〜中略〜
近代化しつつある政府が技術者と専門家とに依存することに、自由への脅威を指摘する人々もいる。
〜中略〜
おたがいに(政治と技術者)理解することができずに敵対しあっている「ふたつの文化」が存在しているのは、危険なことである。これに対する答えは、長期的には教育改革しかないが、中期的な解決方法としては科学的問題と政治的争点の双方をもっと効果的に大衆化することである。」

今の原発問題がまさにその通りだ。確かに報道で多くの情報が出され、書店には原発原子力に関する本が多く並べられているが、効果的に大衆化(大衆化という言い方は不謹慎かもしれないが)されているのか。

このように多くの点で現代でも通じる(書かれたのが1990年頃のため、ソビエト連邦などがでてくるが)。