「平安朝の母と子」、服藤早苗、中央公論社

平安朝の母と子―貴族と庶民の家族生活史 (中公新書)
平安時代の人々の結婚や子どもの考え方がよくわかる。一夫多妻制だと、夫権が強いように思うが、実は妻の家に入る婿入り婚が一般的であった。高校で和歌を習い、その和歌で恋を伝え、通うことは知っていたが、結婚後はどうなるのかを知らなかったので、面白かった。とはいえ、当時の結婚は今のように婚姻届を出すわけではないので、緩やかなものである。正妻の実家に住みながら、その妻の父親から資金援助をしてもらうスタイルである。だから、父親がなくなり力がなくなるとでていくこともあったようだ。

一方、子どもには父親が正妻与奪の権利を大きく持っていた。もう通わなくなった女性の子どもは女性と同じく捨てられることもあったようだ。だから、当時の文献には多くの子どもが犬に食われていることが述べられ、国も度々子どもを捨てないように通達を出している。しかし、時の帰属が気にしているのは子どもを守ろうということではなく、穢れだ。自分の使用人の子どもが犬に食われたことを知り、その穢れがどこまで及んだかを気にしている。なんとも残酷な時代である。