「江戸城御金蔵破り」,黒崎裕一郎,徳間書店

江戸城御金蔵破り
著者は時代劇の脚本家として有名だそうである.必殺仕掛人木枯らし紋次郎銭形平次などの脚本に関わってこられたという著者プロフィールをみて,有名な時代劇ばかりやんと思った.


さて本の中身だが,タイトルの通り御金蔵破りをします.幼いときから算学を学んだ主人公だが父母の期待が強く,算学を必死で学んできたが,嫌気が差す.現代にもありえるような展開ですね.そのため,算学を学ぶためと称して家をでる.もちろん学ぶつもりはほとんどないが,一応算学道場に入りしばらくは学ぶが,途中から遊びに興じるようになり勝手に出て行く.そして流れ着いたのが江戸.金もなくなり途方にくれていると,同郷の人に会い彼の伝手で仕官がかなう.しかし,ひょんなことでご禁制の「火薬の製造・密売」に資金をだす.これが,灰色のような疑いを持たれ,面倒をいやがるお家から免職を命じられる.その原因を作った幕府に対して恨みをもち,お金がほしかったことから,隠し金があるという天守台近くの金蔵に盗みに入ることを思いつく.全くの逆恨みですね...そして結局盗みに入り,まんまと4000両を手に入れる.その金をもとに2年間好きな女子と生活をしたが,奉行所に捕まり,磔・獄門となる.


簡単にいってしまえばこれだけです.感想を言うと,金蔵破りまでのふりが長いです.主人公の生い立ちを述べ,金蔵破りの準備を始めるまでに半分ほどのページを使っている.それに歴史に結び付けようという考えか,坂本竜馬桂小五郎武市半平太と知り合うという設定まで入れている.なんとも強引である.準備のとき巧みさや金蔵破りのドキドキハラハラさせる展開をもっとたくさん入れてほしかったというのが率直な感想.もちろん,今の本でも面白いのだが,金蔵破りというタイトルにするなら,巨大な組織を出し抜く快活さや興奮をもっと盛り込んでほしい.ちなみに捕まったのは,金を独り占めしたいと考えたであろう武市半平太によって指されたためである(本の中でははっきりとは書かれていない,竜馬がそう疑った,とのみかかれている).