「国家の品格」,藤原正彦,新潮社

国家の品格 (新潮新書)
ベストセラーになっているこの本を読む.極論であるところも数々あるが,なるほど確かにと思うところもある.特に,理屈ではなく倫理・道徳として「だめ!」なことを教えない日本に品格はないというのはもっともである.実は理屈自体も命題や定義というそれ以上説明のしようのない部分を持っている.物理学で言えば,F=ma.これを証明せよといわれてもできない.あるいは,「・を点,・を並べると―(線と呼ぶ)になる」という数学(幾何学)の命題は証明できない.そういったことと同様に,「悪いことは悪い」,「こうしなくてはいけない」というものも必ずある.それは小さいときから言われるべきものである.


これらの積み重ねが,国としての誇りを生み出すと著者は述べ,そういう国が品格を持ち多くの国から尊敬を集めるのだと述べる.イギリスは経済的にはすでに二流かもしれないが,世界中から尊敬を集めている.一方,日本は世界第2位の経済大国であるにも関わらず,いまいちな扱いである.そこには品格を高めるための努力がないのだと述べられている.


以前読んだ本で,正確なタイトルは失念したが,日本が世界でどう報道されているかというようなものがあった.そこでは,日本の文化や伝統について誤解もあるが,羨望の眼で見られている部分が多少あることが紹介されていた.このように稀有な文化を持った国だからこそそれを大事にし学び世界に発信する,発信できなくとも身に付けるように努めるべきだと思う.そう,日本は恥の文化,繊細な文化である.大事にしていきたい.