「博士の愛した数式」,小川洋子,新潮社

博士の愛した数式 (新潮文庫)
これは,映画になった作品である.ちなみに私は映画はみていない.小説を読んだ感想を一言で言うと「物足りない」である.博士はどういう人物なのかは,きちんと描かれていた.一方その博士(記憶が80分しかもたない障害を持ってしまった)の家で家政婦として働く私(主人公)の描写がいまいちである.もちろん主人公の視点から見た博士を取り巻く生活だから主人公の描写が少ないのは仕方がないかもしれない.それにしても主人公やその息子(作品中では頭の形がルートに似ていることから,ルートと博士に呼ばれている)をより鮮明に描いてほしい.そうすればより博士の意外性や偉大さが伝わったと思う.

主人公と息子の関係がこじれた部分の描写は,息子の気持ちを考える余裕を持たせた書き方でおもしろかった.色々考えることができ,息子の気持ちを読んだとき,小学生ってここまで考えられるのか?と思った.それほど息子にすばらしいことを言わせている.しかし,とても大事な気持ちだと感じた(詳細は本で読んでください).