「ことばと文化」,鈴木孝夫,岩波書店
一度は読んだほうがいいといわれるくらいに有名な本である.ようやく読了.言葉のもつ文化的な背景を,わかりやすく書いてくれている.くどいくらいの具体例があり,なるほどと感じた.
いくつか,本書から紹介する.
自分の国の食物と同じものが,外国の食事の中にありながら,その食物と他の食物との関係が,自国の食事の場合と違うという,つまり同一の食物の食事全体における価値が,文化によって異るときに,難しい問題がおきるのである.(本書より引用)
たとえば,米がある.日本人は米飯をおかずと一緒に食べるが,他の国では一皿ずつ食べ終わり,米飯も例外ではない.そういったときに,日本でいるときと同じように米飯を片手に他のものを一緒に食べると,下品に見えるそうである.何気なくやってしまいそうな一コマである.
ひとつの言葉でも,使う範囲が異なる.たとえば,英語のbreak,日本語では「こわす」,「割る」,「折る」などと訳されている.しかし,「西瓜を2つに割る」「折り紙を折る」というったときには,まったく使えない.
(内容をまとめた)
このように,同じ様な言葉でも構造的な意味合いは大きく異なる.とはいえ,構造的な意味をすべて辞書に書くと非常に分厚い辞書になる上に,訳が難しくなる.ここのところに,日本人独特の英語が生まれる原因があるのだろう.構造的な意味は,まさにその文化が育ってきた土壌・ものの見方が大きく左右するという証が上の例だと思った.